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サーマルイメージングが産業界での価値を向上

このポッドキャスト エピソードでは、Dylan Erwin が熱画像技術が工場の生産性をどのように改善できるかを探っています。

CAM Diagram

このポッドキャストは、2021 年 5 月 27 日に Plant Services によって最初に投稿されました。

ディラン・アーウィン(Dylan Erwin)はFluke Process Instrumentsでテクニカルセールスマネージャーとして活躍しています。以前は製品革新マネージャー、地域販売マネージャー等の役職に携わっていたこともあります。モンタナ州立大学で技術工学を学び、理学士号を取得したディランは、大学卒業後数年間のキャリアを産業オートメーション業界で積みました。先日、トーマス・ウィルク(Thomas Wilk)がこのディランにインタビューし、プラント現場におけるサーマルイメージングデバイスの様々な用途、このテクノロジーの未来、Fluke Process InstrumentsのTV40サーマルイメージャーの発売について話を聞きました。

PS: コロナ禍の中、一般的なサーマル技術への関心の再来が認識されました。Plant Servicesの調査では、読者の大半が、長年にわたって赤外線を信頼できる技術ととらえていることがわかっています。サーマルイメージング技術が昔から産業的価値を牽引してきたのはどのような用途分野ですか?

DE: その通りですね。サーマルイメージング技術はずっと以前からある技術です。貴誌の読者の皆さんの間では、機械的または電気的機器やプラント設備、ホットスポットの温度を測定して、故障状況または故障が迫っている状況を検知するための携帯型サーマルイメージャーがよく知られていると思います。実際に、このような用途は製造業から発電所にいたるまであらゆる工業施設でみられます。この技術は確かに優れています。携帯型の赤外線放射温度温度計による目で見て非常にわかりやすいアイキャッチ効果を備えているとともに、非接触温度センサーもずっと前からあらゆる箇所で使用されています。しかし、温度分布等まで把握できたり、ホットスポットの場所を正確に検知できたりするイメージャーの能力には全くおよびません。

つまり、携帯型ツールは用途によっては非常に貴重な情報を提供できるという点で優れてはいますが、一方でそのような情報の入手は使用している間だけに限られるという短所があります。このような理由から、当社では、生産性または安全性という観点からプラントの運転に最も重要とされる領域の温度を毎日24時間連続的に監視したいというニーズの高まりを認識したのです。

PS: 毎日24時間の温度監視も含めた遠隔モニタリングへの関心は高まってきているとお感じですか?サーマルアプリケーションは大半の場合、プラントの生産性向上の目的で使用され、製品品質の維持という用途はあまり知られていないのではないかと思いますが、これに関して現場ではどのようにお感じですか?

DE: 温度の測定は品質の鍵となります。この背景、およびこの用途の範囲や能力をわかりやすく説明させてください。固定式サーマルイメージャーと各種プロセス機器にはシングルポイント赤外線による非接触式温度センサー、赤外線温度計等、幅広いポートフォリオが取り揃えられています。友人や新しく知り合った人に私の仕事を説明するときに私はよく、トルティーヤチップスからスマホにいたるまでのあらゆる製造プロセスで当社の製品が使用されていると話しています。固定式イメージャーも測定値の提供、食品、医療機器、運搬機、金属、建材等の製造に同じように貢献しているのです。

品質という側面からみた場合、これらの用途は2つの領域に分けられると思います。ひとつは100%の品質点検、つまりパス、フェイルの判定を行なうプロセス管理です。自動車用コンポーネント製造分野における一例をあげてみましょう。自動車のリアガラスにはデフロスターグリッドと呼ばれるコンポーネントが組み込まれています。ボタンを押せば熱線が加熱し、ガラスの曇りがなくなって後ろが見やすくなるというコンポーネントです。このコンポーネントのメーカーでは、製造ラインから流れて来るこれらのリアガラスをテストステーションに送り、当社のサーマルイメージャーを使用して加熱エレメントが実際に加熱しているか、破損がないか、連続回路が正常に機能しているか、故障がないかをチェックしてから、アッセンブリプラントへと送っています。

自動車分野では、合成樹脂コンポーネントや電子部品またはその他の部品のためのハウジングの製造現場でも利用されています。ここではレーザ超音波法による溶接が多く利用されています。サーマルイメージャーではこのような溶接が完了しているかを確認できるだけでなく、その経過中の温度も測定することができるのです。温度が低過ぎれば溶接は正しく行なわれません。つまりしっかりとシーリングが行なわれません。また、超音波法溶接の場合、2つの部品がしっかりと押し付けられていなければ、熱エネルギーが消散し、その部分の溶接が弱くなってしまうこともあります。つまり、メーカーにとっては、仕様通りに製造された製品がサプライチェーンや消費者へ出荷されることは非常に重要な課題なのです。

品質という側面におけるもう1つの領域は、むしろもっと一般的なプロセスモニタリングだと言えると思います。ここでは具体的なパーツや製品が仕様に沿っているかという点に注視するのではなく、その後の調査や分析のためのデータを収集し、プロセスの変化を把握したり、設備やメンテナンスの問題があればこれを間接的に認識しようとするもので、有数のメーカーでこれが行なわれています。例えば、ある程度まで加熱または乾燥されるアグリゲート製品がある場合、ラインから流れて来る、またはオーブンや炉から来るベルトをサーマルイメージャーでモニタリングすれば、何か低温の箇所を検知した際に、「おい、オーブンのバーナーがおかしいぞ。確認したほうがよくないか」という信号がベルトから出されるのです。これは、品質という観点からみた場合の数ある用途例の中のいくつかにすぎません。

生産性という観点をみれば、重要設備や機器の監視という点についてはすでに触れましたし、これがプラントの運転には最も重要な要素となります。例えば製鉄設備やこれに似た施設の多くでは、取鍋と呼ばれる設備にこの技術が使用されています。取鍋とは、溶銑を炉から次の成形プロセスへと運搬するための、れんがで内張りされた巨大な耐火性ベッセルです。通常は複数のこのような取鍋が常時運転されています。そしてここに複数の固定式サーマルイメージャーを個々の取鍋に取り付けてそれぞれのサイクルを通して監視しています。これによって、ホットスポットを検知し、耐火性の低下や消耗が認識されれば、これを警告することができます。れんがの不具合によって噴出などが発生すると、これは深刻な生産性の低下につながり、溶銑が漏れ出すと安全性が脅かされる深刻な事態につながります。

重要設備の監視例としては、さらに石灰釜、つまり巨大な回転キルンを使用するセメント工場や製紙工場もあげられます。中には工業機械としては最大の規模のものもありますが、ここでも同じように熱処理が行なわれる部分では鋼鉄製シェルに断熱材として耐火性レンガが施されています。このような規模になると、れんがの不具合発生からもなお焼成を続けてシェルに穴を空けてしまうと、通常毎日24時間稼働している施設でダウンタイムという深刻な問題が生じるだけでなく、長い時間と高いコストをともなう修理が必要となります。しかし、それを早期に把握でき、「おい、次のダウンタイムで問題のありそうなれんがを交換しよう」と通知できれば、そのような事態を予防できるのです。

PS: エンドユーザー向け機器では超音波やモーションキャプチャ映像等のサーマル機能が他のデータセットにまとめられているのをよく見かけますが、自社製の状態モニタリングデータセットとして自社製のデータセットに入っている場合もよく見かけます。Fluke Process InstrumentsのTV40サーマルイメージャーの場合はいかがですか?市販されている他のサーマルカメラと特に違う点とは何ですか?

DE: TV40の価値はカメラ自体にあるのではなく、ここで使用できるソリューション全体に由来しています。例えば、コントロールシステムや制御室内のコンピュータに接続するためのネットワーク機器、実際にモニタリングする対象に応じた視界への焦点付けまたは拡大を可能とする数種類のフィールド交換可能なレンズ等、、厳しい工業環境下での運転を可能とする多数のアクセサリが用意されています。さらに、赤外線と可視光を同時に照準するための標準カメラが組み込まれています。パン・チルト機構では、カメラを取り付けた状態で360°の回転を可能とし、自由自在にカメラの向きを上下に変えられることから、そのカバレージをしっかりと最適化できるという点で数社のお客様から非常に好評を得ています。どのような用途でも最高のソリューションへとカスタマイズするための追加コンポーネントが多数用意されています。

しかし、もっとも違う点はThermoViewソフトウェアです。このソフトウェアが全てをまとめています。このソフトウェアは非常にパワフルなオートメーション機能の数々を備えています。これを話し始めると1日では終わらないのですが、例えば自動アラーム、信号出力、データ記録、赤外線画像の自動添付メール送信機能など。これら全てを基本機能および(または)ロジックとともに組み合わせることができます。例えばお客様のコントロールシステムからインプット、つまり何かを実行したり、タイミング条件等にもとづいて作業するためのトリガーを取り込むこともできるのです。ここには多数の機能があり、非常に深く、複雑なものもありますが、それでも非常に直感的に使用できます。例えば、先日私たちはマーケティング用に写真や映像マテリアルを集めるため、あるFluke拠点に行ったのですが、その際、この製品を触ったこともなかったマーケティングマネージャーが数分の間にカメラセットアップを行ない、ソフトウェアを作動させ、接続、ストリーミングをやってのけたということがありました。つまり、とても使いやすいソフトウェアなのです。

私は制御に携わっているわけでもなく、自動化エンジニアでもありませんが、私も顧客の現場でプログラムのセットアップを一緒に行なったことがあります。ここではパス、フェイルコントロールの例を使用しましたが、多くの関心領域を設定したり、これらの温度条件を設定したりして、これらの要素が一定の温度範囲まで加熱されるかを確認できるようにもしています。PLCからのトリガーとの組み合わせやその後パスまたはフェイル信号を送り戻して、自動化された作業を行なわせるといったことも行なっています。このように、お客様が非常に高機能な毎日24時間モニタリング&自動化プログラムを、統合のために第三者の手を借りることなく、またはカスタムソフトウェアのプログラミングを行なうことなくセットアップできるという点に大きな価値を見出しています。

PS: それは本当に良いことですね。統合パートナーのサポートを不要とした簡単な立ち上げと実装を行なえるという点は重要だと思います

DE: はい、その通りです。そして最後になりますが、当社のアプリケーション&テクニカルサポートチームにご相談いただけば、セットアップやトラブルシューティングの作業を遠隔でも現場でもサポートします。本当に頼りになるすばらしいスタッフたちです。

PS: それはすばらしいですね。サーマル技術に関しては数ヶ月毎に革新製品が登場しているようですが、今後の5年間にあなたが期待している優れた技術とは何ですか?ここで読者に教えていただけますか?

DE: まずは過去5年間を振り返り、我々がどこまで達成したかを話したいと思います。カメラは確実に改善されています。ピクセル分解能はより高くなり、ストリーミング速度はどんどん速くなってきています。さらに、通信と統合オプションの柔軟性が向上し、いくつかのスタンドアロン機能はしっかりと定着を遂げています。私たちは今後も一般的な技術トレンドと並行して、より小さなフォームファクタや性能向上を追求し続けていきます。測定や可視化技術がもつ未来像を分類したくはありませんが、例えば私たちは多くのデータをもとにカメラの性能を評価しています。TV40の例を挙げてみると、640 x 480ピクセル分解能で、毎秒60フレームまでのストリーミングを実現しています。これは、毎秒1800万回以上もの個別温度測定にあたります。

これはもちろん宣伝文句のようなものですが、この点だけを強調しすぎるのはよくないと考えています。本当に大切なことは、正しいデータを選び、それを活用することだと思います。つまり、今後は関連する温度データをもとにした是正措置の簡素化と合理化にもっと力を注いでいきます。そしてこれは、統合の簡素化、様々なコントロールシステムや通信プロトコルとの相互運用性の向上によって達成されることでしょう。無人サイトへの遠隔アクセスも可能になりますが、必ずしもリモートサイトがある必要はありません。サブステーションをモニタリングするパン・チルトシステムがあれば、プラントにいるときに施設の端に位置するプロセスで何が起こっているかを知りたくても、現場を歩き回る必要はなくなります。つまり、どこからでもデータへ即時にアクセスできるようになるのです。

この領域での意識向上は今後も続くと考えています。保険や規則的なものを背景とした安全性への関心の高まりが見受けられます。火災の防止および検知を考えてみてください。これは火災警報を用途としているものではないため、当社では火災報知器としては販売していませんが、その機能のいくつかはここにも搭載されています。石炭やバイオマスのパイル等で火災が発生する前に熱の発生を検知する能力がその例です。

遠い将来には、AIツールの統合にも着手していくことでしょう。どのようなものになるのかは一言では言えませんが、より高機能なソフトウェアになるでしょう。関心領域の直感的セットアップができるかはわかりませんが、パーツを製造したければ、それをオートメーションプログラムにすぐに設定でき、新しいパーツの製造を開始できようになるでしょう。コピー&ペーストするだけで、ソフトウェアが「おい、今何か違うことを始めたね。君のために解決してあげるよ」と設定を行なってくれるのです。また、最新の画像から不具合を検知することもできるようになるでしょう。設定されたパラメータをもとにセットアップされた関心領域がある場合にも、低温のスポットやその他の温度異常が他の場所に見つかればそれを認識できると良いと思います。

産業IoTやインダストリー4.0という言葉をよく聞きますが、複数のデータストリームをサーマル分析に統合して、「おい、来週からは少し寒くなるぞ。最終製品が変化しないように炉の温度を調整した方がいいんじゃないか?」と提案することも可能になるでしょう。このように、ポテンシャルはたくさんあります。これからこの分野がどのように発展し、産業化されていくか、本当に楽しみですね。