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コーティングの硬化

見栄えや機能上の理由から、製品にコーティングを施すことがあります。その際にはコーティングの硬化が重要な工程になります。バッチ式オーブンでも連続式オーブンでも、製品自体とそのコーティング剤を指定の温度にまで高め、その温度を一定時間保つ必要があります。一般的な処理時間として、指定の温度に25~35分で到達できるようにし、硬化温度が20分という最短で済むように設計します。

通常、コーティング剤メーカーは、提供するコーティング剤が完全な性能を発揮するよう満たすべき仕様として温度と時間を指定しています。不十分な硬化や過剰な硬化は、密着不良や耐衝撃性の低下、表面仕上げの劣化など、品質に多大な問題を生じかねません。コーティングする製品の手直しには手間も時間もかかりますので、毎回、その仕様を実現することが非常に重要です。

温度プロファイリング

コーティング産業における温度モニタリングの必要性はよく理解されていますが、単にオーブン制御装置の設定値を確認するだけでは不十分です。また、オーブン内には熱電対が設置され、その雰囲気温度をモニタリングしながら制御していますが、加工対象そのものの温度については十分な情報が得られません。板金などのシンプルで均質な製品でも、その温度はオーブンの上下や左右で変わります。断面が変化するよう製品や多数の異なる材料からなる製品はいっそう複雑になります。

最適な硬化を実現する上で決定的に重要なポイントは、主要な複数の場所での製品温度を把握し、いかにオーブン制御装置の設定を調整するかです。そうした重要な箇所の温度をプロセスの各段階で確実に把握するには、プロセスを通過していく製品の温度を測定するのが最適な方法です。

多くの塗装工場では、Datapaq XL2EasyTrack 3 などの温度プロファイリング・システムを使って、定期的にオーブンのプロファイリングを行うのが日常業務となっています。ほとんどの自動車工場が、Datapaq XL2のようなシステムを使って、毎日、硬化スケージュールを達成しているかを確認し、塗装プロセスの稼働状況と最終製品の品質を保証しています。

各塗装ラインをどのような頻度でプロファイリングするかは、製品の種類や塗装硬化の許容範囲に応じて、それぞれのユーザーごとに異なります。一般には、1シフト毎に各オーブンを測定する場合や、1月に1回という場合もあります。しかし、オーブンの運転状態が変わることでリスクになるかもしれず、温度プロファイリングの必要性が高まる状況もあります。たとえば以下のような場合です:

  • 新しい製品の導入
  • 新しいコーティング材の使用や仕入れ先の変更
  • オーブンの定期清掃の後
  • 生産ラインに大きな故障があった場合
  • オーブン改造の後
  • 生産スケージュールに変更があった場合
  • 停止期間が4日以上に延びた場合

温度プロファイリングの方法

温度プロファイリングは、直接的な方法でも間接的な方法でも行えます。

直接プロファイリング

直接的な方法とは、テストに用いた製品も塗装して顧客に出荷するというように、製品の検査を生産スケジュールの一部に含めておきます。生産の一部として製品を塗装しますので、硬化オーブンに入れる前に、最終製品として表に見える場所を損なうことが無いように熱電対を貼り付けます。一般には取付具などで隠れることになる場所に貼り付けて、塗装を損なうことが問題にならないようにします。

間接プロファイリング                                 

間接的な方法では、テストを目的として用意した製品を用いますので、熱電対は恒久的に貼り付けておきます。この製品は、テストの必要がある場合に塗装ラインに入れて、オーブンを直接通します。

このような2つのアプローチの長所と短所を以下の表にまとめました:

直接プロファイリング

長所 短所
テスト用の製品を保管しておく必要がない 熱電対の貼付け具合が変わると、測定結果に一貫性が得られない
トラブルシューティングの時に、注目する領域に応じて簡単に熱電対の配置を見直すことができる 熱電対の貼り付けという硬化前の製品に対する作業や表面へのダメージが増える
汚れたテスト用製品でプロセスにコンタミネーションが発生する危険性が無い

 

実際の硬化条件のもとで温度を測定できる

 

間接プロファイリング

長所 短所
熱電対を常に同じ位置に配置でき、一貫性を確保できる それぞれの製品サイズに応じたテストピースが必要になる
取り扱いの回数が減るため、熱電対の寿命を長くできる テストピースの保管スペースが必要になる
不慣れな作業者でも温度プロファイリングを実行できる 熱電対やテストピースのコストを検討する必要がある

熱電対の配置

オーブンの温度プロファイリング・システムにおける重要な要素が熱電対です。そして、データ収集の精度と一貫性のためには、その熱電対の適切な選択と配置が欠かせません。ただし、熱電対の配置は、モニタリングする製品の種類やサイズに応じて決定することになります。一般に、製品において過剰な硬化のリスクがある(たとえば、薄い金属の部分)や不十分な硬化になりそうな場所(厚い構造部や多くの部品が締結されている部分)という測定領域を選んで配置します。

また、熱電対の選択は製品の材料や許されるスペースの大きさによります。熱電対の取付には、直接プロファイリングなら磁石やクランプが使え、間接プロファイリングではより好ましいねじ止めや溶接も行えます。

磁石による取付けの例として、MicroMagがあります。これは、Datapaqが自動車産業におけるプロファイリングのニーズに広く応えられるよう特別に設計した熱電対です。このコンパクトなセンサは、狭く奥まった場所にも設置でき、通常なら困難な場所も簡単に測定できます。

定期的な温度プロファイリングでは、一般に6~8点での測定が行われます。しかし、新しい製品の発売を計画する際には、オーブンのセットアップと最適化のためにより詳細なプロファイル情報が必要になります。こうした場合には Datapaq TP3 など最大20本の熱電対入力による温度プロファイラが有効です。また、多数のデータロガーから必要なプロファイルを集め、60本以上の熱電対による温度プロファイルを作成することもできます。

こうした熱電対の配置を正確に文書化しておくことが、製品の温度プロファイルを評価するうえで決定的に重要です。その作業を支援するため、Datapaq Oven Tracker Insightソフトウェアには、自動車の模式図で熱電対の配置を表示するだけでなく、詳しい写真を含む補足的な熱電対ライブラリを援用して正確な熱電対の位置を示せる機能を盛り込みました。

データの分析

塗料メーカーが指定する硬化スケジュールをプロセスが満たしているかを判断するためには、様々な分析ツールが考えられます。最もシンプルなものとしては、“温度と時間”の計算によって、コーティングに十分な熱が加わり、硬化反応を完了できたかを判断する目安にすることができます。

一方、Datapaq Value指標や硬化に対する焼付チャートの計算など、もっと高水準なツールを活用することもできます。このDatapaq Value指標の計算値は、多くの種類の硬化反応における反応速度を1次式で表現するアレニウスの式に基づいています。その計算では、作用した温度と時間をすべて合計し、硬化指標となる値を生成します。結果が100になると、その温度プロファイルは必要な硬化スケジュールに完全に一致していることを表します。また100を上回る場合は過剰な硬化条件にあり、100を切ると不十分な硬化条件にあることを示します。

同じオーブン設定と製品のもとで定期的に間隔をおいて取得した温度プロファイルは、統計的プロセス管理分析の実践に必要な入力データのソースとして非常に有用です。この統計的プロセス管理分析は、予防保全の必要性を予測することに使え、予期せぬ高コストな工数の発生が防げます。

まとめ

オーブンの温度プロファイリングは長年、コーティング業界で使われてきましたが、その初期の素朴な技術からは相当な発展を遂げました。なかでもDatapaqの最新技術では、塗装工場や製品マネージャーの皆様がオーブンによる硬化プロセスを効率的に高い精度で把握して管理・最適化できる広範な機能を備るまでになっています。