熱処理とは?
熱処理は加熱と冷却を利用して、材料の硬化や軟化など所定の結果を達成します。熱処理の手法には、アニール処理、表面焼入れ、析出強化、焼戻し、焼ならし、ズブ焼入れなどがあります。
熱処理業界では、一般に2つのビジネス・スタイルがあります。一つは、大規模な生産設備の一部として、社内で部品の熱処理を行う内製企業です。もう一つのスタイルは、様々な顧客や市場に対し、熱処理を受託サービスとして提供する専業企業です。
専業の熱処理ビジネスでは、様々な形状とサイズの部品について多くの異なる材料を処理します。そうしたプロセスでは、複数の工程で異なるタイプの炉を用いて、指定の特性にまで仕上げる場合も稀ではありません。そのため課題も多いと言えます。第一に、熱処理サイクルを通じて加工する部品の全てについて、そのプロセスをモニタリングすることが現実的でない場合や、不可能なケースもあります。第二に、熱処理プロセスの中には、適切に実行しなければ必要な特性が得られない場合があります。このような場合には再処理や製品の廃棄が必要になります。また、熱処理は一般に最終工程と考えられますので、製品の廃棄コストは高くつきます。これは、まさに航空機や自動車産業に言えることです。
では、生産技術者はどのようにして、部品加工に用いる設備がその目的に適ったものであるかを保証できるのでしょうか? 確かに“処理の後”で部品を検査すると、その処理が適切であったかどうかが分かります。しかし、不要な廃棄や手直しを防ぐため、部品を処理する前にそれを知りたいところです。その対策は、炉をクラス分けできる設備の検査スキームを確立することです。そうすれば、そのクラスをプロセス仕様に取り込むことができ、言い換えれば、部品の処理に用いている装置が十分に効率よく高精度に稼働しており、エンドユーザー仕様を満たす一貫した結果が繰り返し得られることが保証されます。このような炉のクラス分類の仕様は、一般に熱処理の温度管理仕様(pyrometry specification)と呼ばれます。